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4−1−5 経営にかかる具体的提言
これまでの分析を踏まえ、A社の経営にかかる具体的提言として、以下の点があげられる。

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A 協力工場ネットワークの活用によるコストダウン(其同化によるコストダウン)
ここまでみてきたように、現状A社においては協業化としての企業ネットワークが既に存在しており、それによる固定費負担の変動費化(外注活用)や、納期の集中に対するバッファーとして有効に機能している。しかし、現時点における仕組みは、製造工程において工事を巧くさばく点での機能であり、もう一歩踏み込んで仕入の面におけるネットワークのメリットを追求するべきであると考えられる。そして、これが達成されてこそネットワークの意味が重要性を増すわけである。
先に「地区別原価形成要因」では部材費についての指摘を行ったが、北海道における一般的傾向として、鋼材以外でも酸素、アセチレン、炭酸ガスなどの消耗品も含め、仕入値が高留まりする傾向がうかがえる。いうまでもなく、作業船は鋼材トン当たりの工程数が少ないため、いかに資材を安く仕入れるかが勝負のポイントとなる。従って、早急な対応は難しいとは認識しながらも、協力工場等との共同仕入による一括購入などA社が核となった『企業グループ』的な観点を導入し、組織的な仕入体制を構築することによってスケールメリットを発揮し、仕入値についてシステマチックなコストダウン体制を構築することが今後の重要な課題となるであろう。
また、瀬戸内モデル造船所の項でも紹介したが、最近の中国での艤装品等の品質は以前に比べると格段に高くなっており、JISで規定されている品目であれば、国内生産品と見劣りしないレベルになっている。従ってA社としても、今後はそうした安価で良質な国外製品(溶接棒、ワイヤー等)については積極的に物色し、品質を保持できる範囲で活用し、コストダウンを志向するべきであろう。
B ステップアップのための財務体質面での経営基盤強化
A社は、作業船分野への本格的参入により、ここ数年、売上の急拡大を実現してきた。ここで、ワンランク事業をステップアップさせるために、財務体質を含めた、経営基盤の強化が必要である。
?@企業体質転換点(成長のための踊り場)の設定
紹介してきた独自の強みを発揮し、A社は作業船分野に本格参入して以来、高い業績の伸びを維持してきた。売上規模において右肩上がりの急成長を遂げてきたA社は、業容の拡大を追うように運転資金の需要を増大させてきた。売上の増加を原因とする増加運転資金の性質として、資金の流れが一巡すると、いわゆる経常的な運転資金と化するはずである。しかし、A社のように、業容拡大が数年度にわたって図られた場合には、その累積的な増加部分を拡大プロセスの中で賄うことは困難であり、その解消には明確な財務戦略が必要となる。
現在の拡大路線においては、業容の拡大に伴う運転資金も増大するため、本来、次のステ

 

 

 

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